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プロフィール

如月東子

Author:如月東子
C’est l’enfance de l’art.へようこそ。
(セ・ランファンス・ドゥ・ラール)

昔から絵を見るのが好きで、美術系の大学に行き「美術史」などを少し勉強しました。

その後、美術とは関係ないお仕事についたけど、美術について、普通の人よりはちょっぴりだけ多く考えてきました(多分)。

そんな私が、これまで美術鑑賞をするなかで気づいたこと・感じたこと・考えてきたことの中には、美術をもっと楽しみたいと思ってる人に、なにかヒントになることがあるかもしれません。

美術鑑賞の記録を中心に、美術館などの紹介や鑑賞の役に立つ情報などを載せていければ、と思います。

皆さんのお役に立てれば幸いです☆

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展覧会review サントリー美術館《エミール・ガレ展》


こんにちは如月東子です。
今日は、六本木にあるサントリー美術館で開催中の
オルセー美術館特別協力生誕170周年〈エミール・ガレ〉展の感想です。


エミール・ガレ(Charles Martin Émile Gallé 1846−1904)は、
アール・ヌーヴォーを代表するガラス工芸家として知られています。


今回の展覧会は、
主にサントリー美術館が所蔵する
エミール・ガレのガラス作品を多数展示すると共に、
ガレがデザインした陶器や木製の家具などが展示されています。

さらに、オルセー美術館所蔵のデッサン等の出品があり、
ガレの創作の過程やインスピレーションの源を
探ることができる展覧会となっています。



【この展覧会の特徴】

展覧会の最初と最後を飾るのは
「ガレと究極」と銘打たれたこの2つの作品。
最初に目にするのは蜻蛉の象嵌を施された白っぽいガラスの脚付杯。
そして、最後を飾るのは「ひとよ茸」の形をした
1メートル近くあるガラスのランプ。

「ガレが創作を通して追い求めた最終的、究極的形態はなにか?」
という問いにこたえるべく、
ガレを理解するための下記の5つのテーマが設定されています。

Ⅰ ガレと祖国
Ⅱ ガレと異国
Ⅲ ガレと植物学
Ⅳ ガレと生物学
Ⅴ ガレと文学


展覧会の冒頭にパネルでもって展覧会の構成が明確に示されており、
テーマ性を非常にはっきり打ち出した特徴ある展覧会だと思います。



【私のみどころ】

Ⅰ章おいては、
高級陶器とガラス器の製造販売会社を営む家に生まれたガレが、
フランスの伝統的な技法や文様を習得して行った頃の作品や、
普仏戦争に義勇軍として参加までしたガレの
愛国心・愛郷心を感じさせる作品などが見られて興味深いです。



また、Ⅱ章でみられるように、
「万博の時代」を背景として、
世界の様々な地域の様々なモノから、
意匠的のみならず、技法的なインスピレーションを得ていた点も
非常に面白いところでした。

おもわず、日本や中国の陶器、堆朱などの漆製品、金属器を
なぜガラスで再現するのか?と思ってしまいました。

…が、おそらくガレにとってそれは「再現」などではなく、
ガラスの技法の新しい可能性をひらくための
一つのヒントに過ぎなかったのだろうと思います。


ガレ作品の真骨頂が見られるのは、
主にⅢ〜Ⅴ章にかけて展示されている作品群。
特に90年代後半から最晩年にかけての
植物や生物たち、そしてポエジーそのものを
ガラスの形態に落とし込んだかのような物体。

作品は次第に重く、暗くなり、
形態の輪郭はぼやけていきますが、
作品としての強さはますます強くなり、
まだ形にならない生命のような曖昧模糊とした力があります。



展覧会の一つの結論は、
「ガレの究極」は「ガラスで作られた彫刻
ということではないかと思います。

ここで「彫刻」とは単なる三次元の造形物をいうのではなく、
真に芸術的であるもの、
人間の根源的ななにかに触れるもの、
すなわち「命ある形」のことを指すのだろうと私は感じました。


実用性と結びついたガラス器という工芸作品。

伝統的には、
絵画や彫刻などの「ファイン・アート」とは区別され、
一段低いものと考えられていて、
ガレの作品への評価も当初そのようなものだったのかもしれません。


しかし、ガレはそのような区別はやすやすと飛び越えて、
ガラスにしか表現できない方法で、
生命そのものを表現してしまったのです。


動植物への深い深い関心と、人の心への繊細な感覚とが、
これほどインパクトのある、存在感のある形態へ
現実化することがあるでしょうか・・・?


おそらくガレはその作品によって、
当時の形骸化した「大芸術」の
革新すらおこなってしまったかもしませんね。


***


ガレの生きた時代性を背景としつつ、
時代との関わりでガレ作品を理解するというよりも、
ガレ自身の内面に降りていき、
その目から世界をみることで、
芸術家の創造の根源に迫るようなアプローチを感じました。

深い印象を残す展覧会でした!




サントリー美術館
オルセー美術館特別協力 生誕170周年 エミール・ガレ
2016年6月29日(水)~8月28日(日)
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2016_3/display.html

(展覧会企画・構成 土田ルリ子さん サントリー美術館学芸員)







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展覧会レビュー 国立西洋美術館《カラヴァッジョ展》


上野の国立西洋美術館で開催中の
《カラヴァッジョ展》の感想です。


***


ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ
Michelangelo Merisi da Caravaggio
(1571年ー1610年)


その天才によって若くして名を挙げながらも、
殺人を犯して逃亡、
修道士となりながら、その激情によって罪を重ね、
恩赦を請う旅の途上で疫病で倒れた、
その劇的で短い人生。

ヴィルトゥオーゾを誇示して
古典古代の伝説の画家に自らをなぞらえ、
宗教的な主題に生身の肉体を持ち込み、
画面にこの世の光をもたらした、
絵画の歴史を変えた男。

誰しもの記憶に残る伝説の画家の展覧会。
カラヴァッジョの凄さ、みせつけられました。
必見です!


【この展覧会の特徴】

カラヴァッジョの真筆11点と共に、
彼からその明暗法を受け継いだ、
カラヴァッジェスキ」とよばれる人たちの作品が、
イタリアを中心に、ヨーロッパ各地から集められています。


展覧会の構成は、下記のようになっています。
Ⅰ.風俗画:占い、酒場、音楽
Ⅱ.風俗画:五感
Ⅲ.静物
Ⅳ.肖像
Ⅴ.光
Ⅵ.斬首
Ⅶ.聖母と聖人の新たな図像


Ⅰ〜Ⅳ、Ⅶは絵画のジャンル、
Ⅴは技法的側面、
Ⅵは特定の行為の描かれ方、と、
いくつかの違った切り口で構成されている点が
面白いところです。


各チャプターごとに、
カラヴァッジョの作品Ⅰ〜2点の展示があり、
あわせてカラヴァッジェスキの作品が数点並びます。

カラヴァッジョの出品作はヴァリエーションに富み、
カラヴァッジョの最初期の風俗作品(《女占い師》)、
ローマの有力者に見出されて名を挙げた時期
卓越した描画力を見せるどこか古典的な作品
《トカゲにかまれる少年》《バッカス》)、
肖像画《マッフェオ・バルベリーニの肖像》)、
逃亡後、深い闇のなかで展開される奇跡的瞬間を描いた
内省的な印象すら与える宗教画題《エマオの晩餐》)、
どこにでもいる普通の人の風貌で描かれた聖人
《洗礼者聖ヨハネ》)など、
カラヴァッジョのいくつかの特質があぶり出されるチョイスです。


一方、カラヴァッジェスキたちの作品ですが、
彼らがヨーロッパ各地にちらばっていたことを示すように、
イタリアそのほか、フランス、スペイン、
ネーデルラントなどの画家達の作品を見る事ができます。

単なる模倣から、
その表現形式を自家薬籠中のものにした画家まで、
カラヴァッジョが後世に残した影響の片鱗を
かいまみることができます。


本展覧会のユニークな点のひとつは、
カラヴァッジョについての歴史史料
多く出展されているところ。
私は手書きの文字は読めませんでしたが、
展示された裁判の記録などに
カラヴァッジョ自身の言葉や行動についての
直接的な証言が残っているのです。
激昂しやすく、けんかっぱやい、
アウトロー的性格が生々しく迫ります。


【私のみどころ】

当然、今回の目玉はカラヴァッジョのオリジナル作品です。
私は実物を見て、
少しカラヴァッジョ作品の印象が変わりました。


カラヴァッジョといえば、
そのドラマティックな「明暗法」が有名です。

スポットライト的な光と闇に沈む背景と細部。

図版でしか見ていないと、
あとに続くカラヴァッジェスキの作品の印象も相まって、
(例えばジョルジュ・ラ・トゥールなど)
その明暗の対比は強烈で、
明部ははっきりとした白い面をつくり、
暗部はほとんどシルエットに近いぐらい暗いと思いがちです。

しかしオリジナルを見ると、カラヴァッジョの光の表現は、
もっとずっと繊細なのだと気づきます。

その明暗法が際立つ《エマオの晩餐》も、
基本は、自然光。

背景が暗く、
光のくる方向が完全に一方向である点は
確かに人工的ですが、
この絵の主題である、
「死んだキリストが弟子の前に現れる奇跡」、
あるいは「復活したキリスト」が
不自然に強調されることはありません。

そこには決して強烈な光はありません。


実物から知ることができることがもう一つあります。

それは、
カラヴァッジョはなによりもまず、
ヴィルトゥオーゾ(卓越した技)の人なのだということ。


画中の最も暗い部分でも、
人物や物の描写は、決して省略されることはなく、
的確すぎる描写で丁寧に描き込まれています。

この点は、同じような画風ののちの作家と
一線を画するところかもしれません。


そんなカラヴァッジョの作品において、
一部分が強調された印象を与えるのは、
背景がほぼ、暗褐色に覆われているからでしょうか。

《ナルキッソス》《エマオ》《法悦のマグダラのマリア》
などに顕著ですが、
暗色が画面の半分を占めており、
人物は残りの半分の中に収められています。
人物(達)の動きと重みのある暗色がバランスします。

描き込みの細かさの割に簡潔に見えるカラヴァッジョ作品と
カラヴァッジェスキたちの作品との差は
こういうところにもみられます。


描写の緻密さと省略、
繊細さと大胆さ、
北方的な細密さとイタリア的な明瞭さ、
なによりも新時代を感じさせる写実性と内面性。

カラヴァッジョに流れ込み、
カラヴァッジョの表現からほとばしり、枝分かれする
西洋絵画の歴史がみえてきます。


***


本展はなによりも、ヨーロッパ各地にある
11点ものオリジナルを同時に実見できる点で貴重です。

絵画作品を見慣れている人も見慣れていない人も、
感嘆すること必至。
ぜひ足を運んでほしい展覧会です。


国立西洋美術館
カラヴァッジョ展

2016年3月1日ー2016年6月1日
http://caravaggio.jp/index.html

(展覧会監修者 ロッセッラ・ヴォドレ氏、川瀬佑介氏)







 
展覧会review《英国の夢 ラファエル前派展》

こんにちは如月東子です。

今日は、Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の
《リバプール国立美術館所蔵 英国の夢 ラファエル前派展》
鑑賞の感想です。


***


リバプール国立美術館(National Museums Liverpool)は、
イギリス、イングランドはリバプール(とその周辺)にある
7つの美術館・博物館の集合体です。

19世紀、リバプールは海運貿易で栄え、
ロンドンに次ぐ「帝国第二の都市」とまで呼ばれました。
そこで財を成した商人らが蒐集した美術品を基礎に出来上がっているのが、
リバプール国立美術館です。

今回の展覧会の出品作品は、
リバプール国立美術館のうちでも、
ヴィクトリア時代の作品やラファエル前派のコレクションで
世界的に有名な下記の3館から集められました。


ウォーカー・アート・ギャラリー(Walker Art Gallery)
http://www.liverpoolmuseums.org.uk/walker/about/history/1819-1871.aspx
レディ・リーバー・アート・ギャラリー(Lady Lever Art Gallery)
http://www.liverpoolmuseums.org.uk/ladylever/index.aspx
サドリー・ハウス(Sudley House)
http://www.liverpoolmuseums.org.uk/sudley/index.aspx


3つの美術館から、65点の作品が来日しています。


展覧会の構成は以下のとおりです。

Ⅰ.ヴィクトリア朝のロマン主義者たち
Ⅱ.古代世界を描いた画家たち
Ⅲ.戸外の情景
Ⅳ.19世紀後半の象徴主義者たち




【この展覧会の特徴】

上記の章立てからも分かりますが、
展覧会タイトルのようなラファエル前派メインの展覧会ではありません。

ガブリエル・ロセッティエヴァレット・ミレイ
そしてホルマン・ハントらが、
ラファエル前派を結成したのは1848年。
この美術グループは、1850年代半ばには解散します。

しかし、本展覧会で展示されている作品はほとんど1855年以降の作品で、
初期ラファエル前派の作品といえるものはありません。


むしろ本展覧会は、
19世紀後半〜20世紀初頭のイギリス絵画の潮流全体を
おおまかに概観するような内容となっています。


ラファエル前派の特徴である
ロマン主義文学的嗜好のほか、
古典古代への傾倒オリエンタリズム
実証主義科学主義
そして世紀末の象徴主義・・・。

以上のようなイギリス絵画の様々な側面が見られますが、
古典古代の世界を実証的な裏づけをもって描いた
ローレンス・アルマ=タデマ
やはり古典古代の世界を描くことを得意とし、
国内外で名声を博したフレデリック・レイトン
そして、かつてはラファエル前派の中心にいて、
やがてアカデミーの重鎮となったE. ミレイ
作品数が多いのが特筆できるでしょう。


一方で、ラファエル前派の、特に後半の時期についてもめくばせがあり、
気づきを得られます。
「ラファエル前派」の運動を下記の3つの時期に区切り、
それぞれの特徴的な作品を解説・展示していて
半世紀にわたるその変遷がわかりやすく伝わってきました。

Ⅰ.結成時(ロセッティ、ハント、ミレイ)
  ※当時の作品はきていない
Ⅱ.19世紀末の象徴主義的時期(バーン=ジョーンズ)
Ⅲ.20世紀の復興の時期(ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス)



このなかで、有終の美をかざるウォーターハウスは、
力量ある画家だと思いますが、
どこかしら退廃的で、画面に抜け感がなく(閉じ込められた感じがある)、
1920年にさしかかろうという時期に描かれたとは思えない
前時代感が印象的でした。



【私のみどころ】


1.エドワード・バーン=ジョーンズ
  《スポンサ・デ・リバノ》(1891年)

3メートル以上ありそうな非常に巨大な作品ですが、
紙にグアッシュ(不透明水彩)で描かれています。

2012年に兵庫県立美術館で、
《バーン=ジョーンズ展〜英国19世紀に咲いた華》
という展覧会をみましたが、
正直、私は彼の作品はあまり好きではありません。

美的趣味はおいておいても、
特に、彼の油彩画を描く技術の未熟さが気になってしまいます。
作品の規模が大きくなると、その点が目立ちます。

ただ、構図の独創性や世界観の構築性は高く、
画集等でみると実物よりも良い絵に感じられるため、
バーン=ジョーンズが現代に生まれていれば、
CG技術などを使うことで、もっと能力を発揮したかもしれない、
と想像していました。

上記の作品は、巨大な絵ですが、
グアッシュという、油彩に比較すると扱い易い画材を用いているため、
技術的な拙さが(比較的)気になりません。
バーン=ジョーンズの素晴らしさがわかる作品ではないでしょうか。

兵庫県立美術館《バーン=ジョーンズ展〜英国19世紀に咲いた華》
http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_1209/index.html



2.Ⅱ章の画家達の作品

ローレンス・アルマ=タデマ、フレデリック・レイトン、
チャールズ・エドワード・ペルジーニ、
エドワード・ジョン・ポインター



アカデミーで高く評価された
筆跡を見せないなめらかなマチエールや
印象派以降であることを感じさせる鮮やかな色彩、
こちらの視線に対し、惜しみなく「見られる」華やかな女性達。

彼らの作品は細密でおそろしく美しく、
その高い技量でもって、
ヴィクトリア朝の闇をすっぽりと覆い隠しているようです・・・。


***


「ラファエル前派」の作品を目当てに行くと
すこし期待はずれかもしれませんが、
19世紀後半のイギリス絵画の様相が
バランスよく見られる展覧会ではないかと思います。


小さい展覧会なので、気軽に足をはこべると思いますよ。

Bunkamura ザ・ミュージアム
2015年12月22日〜2016年3月6日

http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/15_raffaello/



【巡回】
新潟市美術館 2015年7月19日(日)~9月23日(水)(終了)
名古屋市美術館 2015年10月3日(土)~12月13日(日)(終了)
山口県立美術館 2016年3月18日(金)~5月8日(日)

【参考】
リバプール国立美術館
http://www.liverpoolmuseums.org.uk/






 
展覧会review 三菱一号館美術館《プラド美術館展》

こんにちは、如月東子です。

東京丸の内にある三菱一号館美術館で開催中の
《プラド美術館展〜スペイン宮廷 美への情熱》
の感想です。


***


プラド美術館が所蔵する作品群の中から
時代区分ごとに、それぞれ時代の特徴を示す作品が
100点ほどピックアップされています。


展覧会の構成は以下のとおり。

Ⅰ 中世後期と初期ルネサンスにおける宗教と日常生活
Ⅱ マニエリスムの世紀:イタリアとスペイン
Ⅲ バロック:初期と最盛期
Ⅳ 17世紀の主題:現実の生活と詩情
Ⅴ 18世紀ヨーロッパの宮廷の雅
Ⅵ ゴヤ
Ⅶ 19世紀:親密なまなざし、私的な領域


ルネサンスのちょっと前から、
19世紀に至る時代をカヴァーします。


特徴的なのは、「小品」が選ばれていること。

大きいものでも120×270㎝くらいまでの作品で、
天井画等の下絵(ポツェット)も多数含まれています。



【この展覧会の特徴】

本展は、2013年にプラド美術館で開催、
翌年バルセロナを巡回した展覧会の
日本向け再構成版。

会場内の作品解説なども、
もとの展覧会のカタログなどから要約したものだそうです。


スペインでの展覧会名は、
La belleza encerrada(=the captive beauty)

「捕われた美」、あるいは「閉じ込められた美」。

…小さい画面の中に、時代の美が濃密に閉じ込められた、
そんなイメージかもしれません。


スペインでの展覧会のカタログが置いてあったので
のぞいてみましたが、
スペイン・ヴァージョンは、日本版の2〜3倍の作品が
出展されていたもよう。
日本版は、よりダイジェスト的な内容だと思われます。

スペイン版のカタログ図版の中には、
「これも出品してくれていたらな〜」と思う作品も見受けられましたが、
もちろん地理的な制約も金銭的な制約もあり、
全てをそのまま再現するのは難しいのでしょう。

逆にいえば、自館の作品を良く知るキュレーターが
さらに厳選して選んだとも考えられる訳です。
確かに、時代の特徴をつかんだ良品がそろった展覧会
といってよいと思います。

画家一人一人についてのパネルがあり
全般的に解説が多めです。
(三菱一号館はいつもその傾向が強い気がします。)
美術史の概説の勉強にはもってこいです。



【私のみどころ】

ヘラルト・ダーフィット
《聖母子と天使たち》(1520年)


ダーフィット聖母子

ダーフィット[Gerard David 1450/60年〜1523]
主にブルッヘ(ブルージュ)で活躍した画家。

おなじく今回出品のあったメムリンクから、
多大な影響を受けたと言われます。

ぱっと見はわかりませんでしたが、
近くに寄ってじっと見つめてみると
そのマリアの表情は、
つつましやかな甘美さと優しさに満ちあふれていて
すっかりうっとり見とれてしまいました。

ラテン系(スペインやイタリア)に比べて、
ネーデルラントやドイツの女性表現は、
ちょっと優美さやふくよかさに欠けるように思う時も多いですが、
北方にもこんな可愛らしいマリアがいるのですね。



ニコラ・プッサン[1594〜1665]
(Nicolas Poussin)
《ノリメ・タンゲレ》


プッサンノリメタンゲレ


とりあえずプッサンがきていると嬉しくなります!

この画家の作品は、分析的に観て考えるのに向いている気がします。
かなりなスペクタクルな場面であっても、
画面自体が小さいので
構図や色の配置、人物のポーズと背景の関係などを、
考えやすいのかもしれません。

とりあえず、いくら見ても見飽きません。

しかし、この絵、人物を画面の中心線に置いてもいいように思うのに、
なぜ左に寄せているんでしょうか・・・?



アリアノ・フォルトゥーイ・イ・マルサル[1838−1874]
(Mariano Fortuny Marsal)
《フォルトゥーニ邸の庭》(1872−77)
《ポルティチの浜辺のヌード》(1874)
《日本式広間にいる画家の子供たち》(1874)


イ・マルサル


スペインの印象派の画家のようです。

南欧の強い光と鮮やかな色彩が、
印象派の技法に非常によくマッチしています。
ジャポニスムの影響を感じる作品もありますが、
それ以前に、そもそもスペイン文化の中にある
エキゾチック(非ヨーロッパ的)な雰囲気が感じられます。

フランスの印象派とはひと味違う鮮烈さを味わえる作品たちです。


***


全般にはヨーロッパ絵画の概説的な構成だと思いますが、
スペインという地域性・歴史性が見え隠れし、
ユニークな印象を残す展覧会でした。


三菱一号館美術館《プラド美術館展〜スペイン宮廷 美への情熱》
2015年10月10日〜2016年1月31日






 
展覧会review 西洋美術館《黄金伝説展》

こんにちは如月東子です。

上野の国立西洋美術館で開催中の
《黄金伝説展〜古代地中海世界の秘宝》の感想です。

モロー


***


「黄金伝説だって〜(笑)」
という通りすがりの女の子の声を背中にききながら、
ギュスターヴ・モローの絵画に誘われて
足を運んだ展覧会。

会期がはじまってすぐに見に行ったせいもあってか
会場は空いていました。

《〜の宝物》《〜の至宝》とかいう展覧会って、
結構人が集まる印象がありますが、
《黄金伝説》って、
キャッチーなような地味なような、
ちょっと微妙なタイトルですよね・・・。

ヘンなタイトルですが、内容はマジメ。
決してお笑いや拝金主義ではありません。
地道に高品質な展覧会をやるのが西洋美術館。


さて、今回の展覧会で取り上げられているのは、
古代地中海世界「黄金」

黒海沿岸の都市ヴァルナの墳墓から発見された
世界最古(紀元前5千年)の金細工からはじまり、
古代ギリシャトラキア(現在のブルガリアあたり)、
そして、エトルリア〜古代ローマ(イタリア半島)までの
さまざまな金製品が地域と時代順に展示されています。

展示総数は、282点。

耳飾りやペンダントなど、
小さい装飾品がほとんどです。


特にヴォリュームがあるのは、
古代ギリシャのパート。

新石器時代末期の女性像からスタートし、
ミノス文明(※1)、ミュケナイ文明(※2)の
幾何学的な文様が印象的ないくつかの飾り板、
そして、いわゆる「ギリシャ美術」と区分される時代の
装飾品が150点以上はあり、
時代ごとの変遷を見てとることができます。

このパートには当時の陶器がいくつか展示されており、
装飾品を身につける女性達の像を見ることができます。

※1 ミノア文明、クレタ文明ともいう。
B.C.30世紀〜B.C.12世紀にクレタ島を中心にさかえた文明。
※2 ミケーネ文明ともいう。
B.C.16世紀〜B.C.11世紀頃ペロポネソス半島で発達した文明。



トラキアのパートでは、
出土した地域からそれぞれ
ヴァルチトラン遺宝」(B.C.14世紀後半〜B.C.13世紀初頭)、
パナギュリシュテ遺宝」(B.C.4世紀〜B.C.3世紀の)と呼ばれる
黄金製品が展示されています。

パナギュリシュテ遺宝が制作されたのは、
ヘレニズム時代。
しかし、ギリシア本土とはまた違った、
どこか過剰でグロテスク(?!)な表現が魅力です。


最後の、エトルリア〜古代ローマでは、
「粒金細工」と呼ばれる、
非常に細かい粒金(0.15mm)を使った技法などに、
古代人がもっていた技術力をみることができます。



【この展覧会の特徴】

「黄金伝説」というタイトルの由来となったのは、
ギリシャ神話のなかの金とかかわりある「伝説」でしょう。

例えば、
金の羊毛をもとめて黒海沿岸の都市コルキスへ船出した
イアソンの物語。

地下室に閉じ込められたダナエと交わるために、
全能神ゼウスが姿を変じた黄金の雨

不和の神によって、
「最も美しい女神に」といって投げ入れられた黄金の林檎
最も美しい女神はだれかという審判をまかされた
トロイアの王子パリスの判断が招いたトロイア戦争。


以上はどれも人気のあるテーマですが、
本展覧会では、金製品の展示のところどころに
これらのテーマを描いた絵画作品が挟まれています。

それによって、
黄金そのものの存在とそれを利用し加工する当時の文化の様相に加え、
黄金から生み出される人間のイマジネーションという、
二つの位相がたち現れてきます。


特にイアソンの伝説は、
古代ギリシャ人にとって、
トラキアが「黄金の国」としてとられられていたであろうこと、
そして、事実、ヴァルナやトラキアの出土品をみれば
それがただの言い伝えではなかった、
ということを示す物語として特に興味深いものです。


この展覧会が、
古代の金の宝飾品の考古学的展示とならなかったのは、
ひとえに絵画による仕掛けがあるからでしょう。


ただし、私が思うに、
そうであるなら、金製品の展示は古代ギリシアとトラキアにとどめ、
金の生み出すフィクションの側面をもっとアピールできるものにしたら、
より展覧会の独自性がでたのではないか、という気がします。

一方で、「古代地中海世界」というくくりもあるので、
その遺産を知るという意味では、
現在の展示も妥当なのかもしれませんが・・・。



【私のみどころ】

今回、特に注目した作品の一点目は、
《環状の女性像》
(B.C.4500年〜B.C.3300年)
(アテネ国立考古学博物館)


この古代ギリシャパート最初を飾る作品には、
度肝を抜かれました。

映像を探したのですが見当たらないので言葉で説明しますが、
次のようなものを思い浮かべて下さい。

栓抜きの、栓を抜く部分がまん丸い形に型抜きされた
うすべったい金の板。
柄の部分が上です。

長さは10cmもない程度。

柄のお尻部分の両端に小さな穴があいています。
さらに、柄の付け根から少し輪っか部分に下がったところに、
2つの小さな出っ張りがあります。

なんのリングだろう?、と思いますが、
これは女性像だというのです。


この抽象性。
キュクラデス石偶をも超えるあまりにシンプルな女性像。


ごくごく小さい作品ですが、
見るときっとあまりの抽象性に驚かれると思います。

そのあとにつづくミュケナイの一連の飾り板の
幾何学的美しさも必見です。


続いては絵画作品から。
グスタフ・クリムト
《第1回ウィーン分離は展ポスター(検閲前)》
(1898 川崎市市民ミュージアム)

(11月25日からは、同タイトルの(検閲後)に展示替えされます。)


色がハデだというわけではありませんが、
目を引くタブローです。

宗教画の背景として多用されていた金は、
ルネサンス以来、絵画の画面から姿を消していましたが、
19世紀末になり、その息を吹き返しました。

クリムトと言えば、金の使い方が印象的な画家ですが、
「伝統」絵画からの「分離」を主張した彼の、
「新しい芸術」を世に問う嚆矢となる作品に、
金への回帰がみられるというのが面白いと思います。


***


「金」というテーマには様々な側面があり、
一つの展覧会で取り扱うには、重いテーマかもしれません。

個人的には、
古代文明の技術の発展の面や各文明間の影響関係などの説明がなく、
物足りない部分もありましたが、
金をきっかけにして、
色々な興味の広がる意義深い展覧会でありました。


R0012496.jpg


国立西洋美術館
黄金伝説展 古代地中海世界の秘宝
2015年10月16日ー2016年1月11日
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2015gold.html







 
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