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プロフィール

如月東子

Author:如月東子
C’est l’enfance de l’art.へようこそ。
(セ・ランファンス・ドゥ・ラール)

昔から絵を見るのが好きで、美術系の大学に行き「美術史」などを少し勉強しました。

その後、美術とは関係ないお仕事についたけど、美術について、普通の人よりはちょっぴりだけ多く考えてきました(多分)。

そんな私が、これまで美術鑑賞をするなかで気づいたこと・感じたこと・考えてきたことの中には、美術をもっと楽しみたいと思ってる人に、なにかヒントになることがあるかもしれません。

美術鑑賞の記録を中心に、美術館などの紹介や鑑賞の役に立つ情報などを載せていければ、と思います。

皆さんのお役に立てれば幸いです☆

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展覧会レビュー 国立西洋美術館《カラヴァッジョ展》


上野の国立西洋美術館で開催中の
《カラヴァッジョ展》の感想です。


***


ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ
Michelangelo Merisi da Caravaggio
(1571年ー1610年)


その天才によって若くして名を挙げながらも、
殺人を犯して逃亡、
修道士となりながら、その激情によって罪を重ね、
恩赦を請う旅の途上で疫病で倒れた、
その劇的で短い人生。

ヴィルトゥオーゾを誇示して
古典古代の伝説の画家に自らをなぞらえ、
宗教的な主題に生身の肉体を持ち込み、
画面にこの世の光をもたらした、
絵画の歴史を変えた男。

誰しもの記憶に残る伝説の画家の展覧会。
カラヴァッジョの凄さ、みせつけられました。
必見です!


【この展覧会の特徴】

カラヴァッジョの真筆11点と共に、
彼からその明暗法を受け継いだ、
カラヴァッジェスキ」とよばれる人たちの作品が、
イタリアを中心に、ヨーロッパ各地から集められています。


展覧会の構成は、下記のようになっています。
Ⅰ.風俗画:占い、酒場、音楽
Ⅱ.風俗画:五感
Ⅲ.静物
Ⅳ.肖像
Ⅴ.光
Ⅵ.斬首
Ⅶ.聖母と聖人の新たな図像


Ⅰ〜Ⅳ、Ⅶは絵画のジャンル、
Ⅴは技法的側面、
Ⅵは特定の行為の描かれ方、と、
いくつかの違った切り口で構成されている点が
面白いところです。


各チャプターごとに、
カラヴァッジョの作品Ⅰ〜2点の展示があり、
あわせてカラヴァッジェスキの作品が数点並びます。

カラヴァッジョの出品作はヴァリエーションに富み、
カラヴァッジョの最初期の風俗作品(《女占い師》)、
ローマの有力者に見出されて名を挙げた時期
卓越した描画力を見せるどこか古典的な作品
《トカゲにかまれる少年》《バッカス》)、
肖像画《マッフェオ・バルベリーニの肖像》)、
逃亡後、深い闇のなかで展開される奇跡的瞬間を描いた
内省的な印象すら与える宗教画題《エマオの晩餐》)、
どこにでもいる普通の人の風貌で描かれた聖人
《洗礼者聖ヨハネ》)など、
カラヴァッジョのいくつかの特質があぶり出されるチョイスです。


一方、カラヴァッジェスキたちの作品ですが、
彼らがヨーロッパ各地にちらばっていたことを示すように、
イタリアそのほか、フランス、スペイン、
ネーデルラントなどの画家達の作品を見る事ができます。

単なる模倣から、
その表現形式を自家薬籠中のものにした画家まで、
カラヴァッジョが後世に残した影響の片鱗を
かいまみることができます。


本展覧会のユニークな点のひとつは、
カラヴァッジョについての歴史史料
多く出展されているところ。
私は手書きの文字は読めませんでしたが、
展示された裁判の記録などに
カラヴァッジョ自身の言葉や行動についての
直接的な証言が残っているのです。
激昂しやすく、けんかっぱやい、
アウトロー的性格が生々しく迫ります。


【私のみどころ】

当然、今回の目玉はカラヴァッジョのオリジナル作品です。
私は実物を見て、
少しカラヴァッジョ作品の印象が変わりました。


カラヴァッジョといえば、
そのドラマティックな「明暗法」が有名です。

スポットライト的な光と闇に沈む背景と細部。

図版でしか見ていないと、
あとに続くカラヴァッジェスキの作品の印象も相まって、
(例えばジョルジュ・ラ・トゥールなど)
その明暗の対比は強烈で、
明部ははっきりとした白い面をつくり、
暗部はほとんどシルエットに近いぐらい暗いと思いがちです。

しかしオリジナルを見ると、カラヴァッジョの光の表現は、
もっとずっと繊細なのだと気づきます。

その明暗法が際立つ《エマオの晩餐》も、
基本は、自然光。

背景が暗く、
光のくる方向が完全に一方向である点は
確かに人工的ですが、
この絵の主題である、
「死んだキリストが弟子の前に現れる奇跡」、
あるいは「復活したキリスト」が
不自然に強調されることはありません。

そこには決して強烈な光はありません。


実物から知ることができることがもう一つあります。

それは、
カラヴァッジョはなによりもまず、
ヴィルトゥオーゾ(卓越した技)の人なのだということ。


画中の最も暗い部分でも、
人物や物の描写は、決して省略されることはなく、
的確すぎる描写で丁寧に描き込まれています。

この点は、同じような画風ののちの作家と
一線を画するところかもしれません。


そんなカラヴァッジョの作品において、
一部分が強調された印象を与えるのは、
背景がほぼ、暗褐色に覆われているからでしょうか。

《ナルキッソス》《エマオ》《法悦のマグダラのマリア》
などに顕著ですが、
暗色が画面の半分を占めており、
人物は残りの半分の中に収められています。
人物(達)の動きと重みのある暗色がバランスします。

描き込みの細かさの割に簡潔に見えるカラヴァッジョ作品と
カラヴァッジェスキたちの作品との差は
こういうところにもみられます。


描写の緻密さと省略、
繊細さと大胆さ、
北方的な細密さとイタリア的な明瞭さ、
なによりも新時代を感じさせる写実性と内面性。

カラヴァッジョに流れ込み、
カラヴァッジョの表現からほとばしり、枝分かれする
西洋絵画の歴史がみえてきます。


***


本展はなによりも、ヨーロッパ各地にある
11点ものオリジナルを同時に実見できる点で貴重です。

絵画作品を見慣れている人も見慣れていない人も、
感嘆すること必至。
ぜひ足を運んでほしい展覧会です。


国立西洋美術館
カラヴァッジョ展

2016年3月1日ー2016年6月1日
http://caravaggio.jp/index.html

(展覧会監修者 ロッセッラ・ヴォドレ氏、川瀬佑介氏)





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