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プロフィール

如月東子

Author:如月東子
C’est l’enfance de l’art.へようこそ。
(セ・ランファンス・ドゥ・ラール)

昔から絵を見るのが好きで、美術系の大学に行き「美術史」などを少し勉強しました。

その後、美術とは関係ないお仕事についたけど、美術について、普通の人よりはちょっぴりだけ多く考えてきました(多分)。

そんな私が、これまで美術鑑賞をするなかで気づいたこと・感じたこと・考えてきたことの中には、美術をもっと楽しみたいと思ってる人に、なにかヒントになることがあるかもしれません。

美術鑑賞の記録を中心に、美術館などの紹介や鑑賞の役に立つ情報などを載せていければ、と思います。

皆さんのお役に立てれば幸いです☆

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葛藤の痕跡?ーブリヂストン美術館〈ウィレム・デ・クーニング展〉

こんにちは如月東子です。

今日は、ブリヂストン美術館で開催中の
〈ウィレム・デ・クーニング展〉の感想です。


***


Willem de Kooning (1904-1997)は、
オランダ・ロッテルダムで生まれ、
ニューヨークで活躍した画家です。

ジャクソン・ポロックとともに
「抽象表現主義 Abstract Expressionism」の
旗手として知られている画家です。

今回の展覧会は、
デ・クーニングの作品の中でも、
女性像に焦点をあてた構成になっていました。


私はあまり現代美術は見ないのですが、
なんとなく気になって見に行ってきました。


ブリヂストン


平日の午前10時すぎ、
開館後すぐの時間で、お客さんは少なめでした。

以前、通常のコレクション展を見にきたときも
さほど混んでいませんでしたので、
人ごみはあまり気にしなくてよいかもしれません。

デ・クーニングの展示の他、
ブリヂストン美術館のコレクション展も
合わせて行われています。


***


展示室は全部で10室までありますが、
デ・クーニングの展覧会はそのうち2室です。

35点の作品が来ており、
50年代の作品が2点ありますが、
残りは60年代の作品です。


キャプションによると、
デ・クーニングの画歴の中に女性像が現れるのは、
おおよそ3期に分かれるそうです。

その解説だけでは少しわかりにくかったので、
その他の情報もあわせると、
デ・クーニングの女性像を中心とする画歴については、
下記のようにまとめられるようです。


 Ⅰ.1940年代 具象的女性像
   40年代前半では、古典的といえるような作風だが、
   45年からの一連の女性像は、 
   身体パーツが分解され、
   生態的形態を残しながらも、抽象に近づいている。
   1948からの女性像のシリーズは、
   より暴力的でグロテスク。

 Ⅱ.1950年-53年 具象的女性像→抽象へ
   新たな女性像のシリーズを描く。
   より量感に富み即興的な表現となった点で、
   デ・クーニングのキャリアの画期とされる時期。
   56年-57年には、抽象的な風景画へと向かう。

 Ⅲ.1960年代 具象的女性像(より柔らかい)→抽象
   再び女性像を描く。
   滑るように自由な筆致・華やかな色彩で
   エロティックな女性像。
   風景の中の女性像が登場してくるが、
   次第に身体パーツが背景と融合したような表現となる。
   69年には、塑造による女性像の制作もはじめる。
   デ・クーニングは、60年代を通じ、
   gestural abstraction(≒アクションペインティング)的
   表現に近づく。


今回の展覧会で見られるのは、
Ⅲ期目の時期、ということになります。


ちなみに、上記情報の参考としたのは下記のサイトです。

 MoMA 2011 〈De Kooning: a Retrospective〉
 http://www.moma.org/interactives/exhibitions/2011/dekooning/

  MoMAでは、2011年9月18日–2012年1月9日にかけて、
  デ・クーニングの全キャリアを総覧する
  大規模な回顧展が行われており、その際開設されたサイトです。
  http://www.moma.org/visit/calendar/exhibitions/1149

  年表(Periods)とタイムライン(Timeline)が
  とてもわかりやすいです。

 
 The Willem de Kooning Foundation
 http://www.dekooning.org/the-artist/artworks/view/all?view_all=1

  デ・クーニングの研究・鑑賞などを促進するための財団が
  運営するサイト。
  作品紹介だけでなく、文献紹介や、
  デ・クーニング自身の発言記録などもあります。


***


今回の出品作を見ながら私が得た当初の印象は、
全体に「画面の座りが悪い」という感じでした。

特に、女性の全身像は習作めいてみえ、
画面全体の色や形にバランスがとれていないように感じられました。

というのも、
画面上には、女性の身体を身体と認識させるだけの具象性が残っているので、
「女性が描かれた絵画」として見ざるを得ませんが、
それにしては人体プロポーションの不自然さが気になります。
逆に抽象画として見ようとすると
女性の身体の肌色が、もっと自由であるべき色面を区切り、
画面の統一を分断しているように見えてしまいます。

(もちろん、「バランスの悪さ」「気持ち悪さ」ということが、
作品の意図である可能性もあります。)

しかし、今回の作品群の中にも、
私にとって見ていて心地よい、
と感じさせる作品も発見しました。

例えば、《水》(1970 国立国際美術館蔵)。
例えば、《無題》(1969 リョービ・ファウンデーション蔵)。
(いずれも使える画像がみつかりませんでした…。)

いずれもほぼ抽象といってよく、また、いずれも60年代最後の作品です。

これらのより抽象的な作品を基準として他の出品作を見直すと、
60年代の女性像は、
「画面に女性の身体を描きこもうとするが、うまくいかなかった」
という風にも見えてきます。

つまり、
模索的女性像からより安定した抽象表現へと落ち着いていった、
そんな風に。


年表によると、
60年代というのはデ・クーニングのキャリアの中でも
多産な時期だったようですが、
それは、彼が別の表現を求め続けて、
模索し実験し続けていたからだ、という風にも思えてきます。


60年代を通じ、デ・クーニングという画家の中には、
抽象への強い指向があったのではないでしょうか?

その中で、具象的ななにかを画面に取り入れようとしていた、
その葛藤が画面に残されているような気がします。

でも、それが苦しみに見えないのは、
50年代の作品の線的な鋭い黒さから解き放たれたような
明るく鮮やかで闊達な筆さばきの痕を、
私たちが自由の証と感じるからでしょうか?


***


デ・クーニングも、ジャクソン・ポロックと並び、
アクション・ペインティングの旗手の一人とされています。

アクション・ペインティングについては、
むしろその行為自体に価値がある、
とする見方もあるようです。

しかし、今の私たちに得られるものは、
画家の行為を追体験して得られるものだけではありません。

実際にその作品を間近でよくよく見ると、
画家のさまざまなテクニックや偶然を生み出す作為
というのが思った以上にまざまざと感じられるものです。

そこに残されたものから得られるものはたくさんあります。


デ・クーニングの作品には、
規則的な小さな菱形模様がたくさん並んでいるような色面が
ところどころにみられます。

柔らい油絵具を一面を塗ったところに、
紙かなにかをのせ、
絵具が乾かないうちに
紙をゆっくり剥がしたときにつきそうな模様。

紙の上に油絵具で描いたときに
色の周りに滲んでくる油のしみ。

白い絵具の上に引かれた墨のような筆線がはなつ、
ざらざらした黒い陶器に白釉を掛けたような不思議な輝き。


これらすべては即興的な行為で得られた効果であるのかもしれず、
偶発的に生じた表現であるかもしれませんが、
画家の動きは細心で、いつもディテールに注意を払っています。
注意深く見てみれば、
画面は常に画家にコントロールされていることがわかるのです。


絵画は、イメージを伝達する乗り物であると思われていますが、
画家の身体作業を通じて残された物質としてしか存在し得ず、
自分がこの身体をもって見なければ、
その画家の痕跡を感じることはできないのだと、
つくづく思う瞬間です。


***


制作時期が限られており、
作品数的にも多すぎないので、
現代美術に興味のない方でも、
見やすい展示になっていると思います。

コレクション展の中には、
昨年亡くなった堂本尚郎とザオ・ウーキーの
追悼展示の一室もありました。

ぜひ足をお運びください。


〈テーマ展 ウィレム・デ・クーニング展〉
会期:2014年10月8日〜2015年1月12日
会場:ブリヂストン美術館
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/


今日はこれぐらいで。
それではまた。


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