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プロフィール

如月東子

Author:如月東子
C’est l’enfance de l’art.へようこそ。
(セ・ランファンス・ドゥ・ラール)

昔から絵を見るのが好きで、美術系の大学に行き「美術史」などを少し勉強しました。

その後、美術とは関係ないお仕事についたけど、美術について、普通の人よりはちょっぴりだけ多く考えてきました(多分)。

そんな私が、これまで美術鑑賞をするなかで気づいたこと・感じたこと・考えてきたことの中には、美術をもっと楽しみたいと思ってる人に、なにかヒントになることがあるかもしれません。

美術鑑賞の記録を中心に、美術館などの紹介や鑑賞の役に立つ情報などを載せていければ、と思います。

皆さんのお役に立てれば幸いです☆

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「伝統」は往時の「コンテンポラリー」なのだ

こんにちは如月東子です。

今日は、愛知県美術館で見た
〈ロイヤル・アカデミー展〉の感想です。
(すみません、開催は終了してしまいました!)


***


イギリスのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ
(Royal Academy of Arts)は、
ジョージ三世の庇護のもと、
芸術家たちによって1768年に設立されました。

大陸の芸術に押されていた
イギリス人芸術家の財政的支援を目的として、
毎年展覧会(annual exhibition)を開催し、
若い芸術家に専門的訓練をほどこすための機関でした。

その、ロイヤル・アカデミー設立から、
20世紀初頭までの約150年の歴史をたどる展覧会。

会場は、愛知県美術館
愛知芸術文化センター」という
巨大な複合文化施設の一階を占めています。

名古屋はなんでも施設が大きいですね!


***


展覧会の構成は以下の通りで、
時代に沿って作品が紹介されていました。

Ⅰ章 設立:名声への道、1768-1837
Ⅱ章 国家的地位の確立、1837-1867
Ⅲ章 名声と繁栄、1867-1895
Ⅳ章 モダンの受容:黙認と妥協、1895-1918

さらに別枠として、
「アーティスト教育」
というセクションがもうけられ、
アカデミーの教師や生徒達のデッサン、
彼らが学んだ美術理論等も紹介されています。

ほぼ全てロイヤル・アカデミーの所有作品。
展示点数は約80点となっていました。


***


さて、今回の展覧会。
「アカデミー絵画」というと思い浮かべるような
「歴史画」や「宗教画」といった
重いテーマの絵画は少なめ。

人によって色々見どころはあると思いますが、
今回私は以下の5つの点に注目しました。


【風景画—ジョン・カンスタブルの観察記録】

「イギリス絵画」ときくと
すぐに頭に浮かぶのは「肖像画」とともに「風景画」ですが、
今回の展覧会では、
ターナー《ドルバダーン城》
ゲインズバラ《泉に羊のいるロマンティックな風景》など
瞑想的で情感のある傑作に加え、
カンスタブル(John Constable 1776-1837)作品が
数点まとめて見ることができました。

なかでもカンスタブルの観察精神がみて取れる
《雲の習作:木の地平線》は興味深い作品です。

カンスタブル雲の習作

このシートには、
雲のスケッチとともに天気の推移が書き加えられているそうです。

カンスタブルは1820年から雲の観察を始め、
2年間ほどの間、たくさんのスケッチを続けたようです。
http://nga.gov.au/exhibition/constable/Detail.cfm?IRN=143229


コンスタブルの雲の習作についての本も出ています。
Constable's Clouds: Paintings and Cloud Studies by John ConstableConstable's Clouds: Paintings and Cloud Studies by John Constable
(1999/01/01)
Edward Morris

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その時々の自然現象を観察し、記録し、蓄積する、
その姿勢は近代的な科学者そのもののようです。


【オリエンタリズム】

中近東やアフリカなどの風景や風俗を描いた作品が
いくつか来ていました。

ヨーロッパ諸国が植民地を拡大していった時代。
19世紀のイギリスは、植民地主義の最強国でした。
世界各地にちらばったイギリス人の中には、
画家も含まれます。

ウィリアム・ホッジズ、
デイヴィッド・ロバーツ、
フレデリック・グドール
といった画家達は、
自らインド、中東、アフリカに足を運び、
その光景を写し取って、本国の人々に披露しました。

「オリエンタリズム」とは、
「元来、特に美術の世界において、西ヨーロッパにはない異文明の物事・風俗(それらは“東洋”としてひとまとめにされた)に対して抱かれた憧れや好奇心などの事」を意味します。
http://ja.wikipedia.org/オリエンタリズム


エジプト・カイロに数年滞在したという
ジョン・フレデリック・ルイス (John Frederick Lewis)の作品
《カイロのカフェの入り口》

ルイスカイロのカフェの入口

薄く塗られた鮮やかな絵具で、
当時のカイロの街角の文物とともに、
現地の人物の表情が活写されています。

エジプトの光景など見るすべをもたなかった
多くのイギリス人たちの目に、
見たこともない珍しい光景が、
どれほど鮮やかに映ったことでしょう。


しかし、一方で、
エドワード・サイードが分析したように、
それは決してニュートラルな興味というべきものではなく、
「西洋」を中心として、
「東洋」を未発達で劣ったものとしてみる見方の表出でもあり、
まさに植民地化され、収奪されつつある土地の光景でもありました。

また、
場合によって、オリエンタリズムは、
性的な女性ヌードを描くための口実にも使われてきたことは、
つとに指摘されることです。
ハーレムや奴隷市場を舞台に、
半裸・全裸の女性達が、まさに品定めされる光景が、
エキゾチシズムとともに消費されたのでした。


あからさまな西洋中心主義が表れているようには見えなくとも、
美しく鮮やかな情景は、
ある時代の文化を背負った画家が切り取り、編集した光景であること、
あるいは、
ある時代のある特定の視点が埋め込まれていること、
を意識してみると違った見方ができるかもしれません。


【道徳画】

リチャード・レッドグレイヴ
(Richard Redgrave)
が描くのは、
私生児を生んだ少女が、
父親から勘当され、
乳飲み子を抱えて夜闇の中に放り出される瞬間です。

TheOutcastRichardRedgrave.jpg

ヴィクトリア朝の社会は、
性的に厳格な時代であったといわれています。
未婚にもかかわらず子供を産んだ女性が、
「家名を汚す」ものとして家から追い出されているのでしょう。
中央の初老の女性の冷たいまなざしは、
ヴィクトリア朝における「世間の目」を象徴しているようです。


ただでさえ女性が職を得ることが難しい時代、
乳飲み子を抱えながら彼女は、
これからどのように生きていくのか…?

教養ある未婚女性であれば、
良家の子女の家庭教師という道もあるかもしれません。

でも、身寄りもなく、子供を抱えた女性が
賃金を得られる道は、お針子か娼婦という時代…。

レッドグレイヴの作品の後日談となるような、
「堕落した女」の悲惨な末路を描いた絵も描かれました。

ある種の絵画が、
(特定の男性らに都合の良い)性的なモラルを強化し、
この絵を見る女性達に
恐怖心を植え付ける役割を果たしていたということも
思い出したいところです。


【歴史的実証主義】

ローレンス・アルマ=タデマ(Lawrence Alma-Tadema)は、
歴史を舞台にした風俗画を多く描いた画家です。
非常にクリアで、緻密、写実的な描写が印象的です。

《神殿への道》は、
バッコス神(ディオニソス)を祭る女達の姿を描いた作品です。

アルマ・タデマ神殿への道

占い師のような女性が前に座る扉の向こうに、
バッコスを祭る女性達(=バッカイ)が
踊るような格好で横切っています。


ルネサンスの頃から、
古代遺跡の発掘の成果は、
芸術に大きな影響を与えてきましたが、
19世紀以降、
文献資料などに基づく厳密な考証の要請が
強くなっていったようです。

バッカイを描いたルネサンス絵画と見比べると、
細部の表現に、緻密な時代考証がされているだろうことが見て取れます。

参考 
Titian_Bacchus_and_Ariadne.jpg
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
《バッカスとアリアドネ》(1520年 - 1523年)
ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

(中央の赤い衣をまとうバッコス(神)の後ろを、
バッカイが付き従っています。)

アルマ=タデマの作品の中は、
フィクションと緻密な検証との絶妙な融合の幻出なのです。


【スナップショット】

驚くほどスナップショット的な
絵画も見つけました。

ウィリアム・クウィラー・オーチャードソン
(William Quiller Orchardson)

《ノース・フォアランドにて》

wmr_raa_pl000532_624x544.jpg

自分の娘を描いた絵画のようですが、
まるで、デジカメで日常の一瞬を切り取ったかのようです。

新しい技術である「写真」の登場は、
絵画に影響を与えました。
写真技術の影響は、ドガの絵画等にも指摘されますが、
オーチャードソンの絵画もこのような流れにあるのでしょうか?

でも、この絵は、
むしろ写真では表現しがたいような「動き」が感じられる作品です。

画家は、写真以上に現実を
ヴィヴィッドに切り取ることができるのかもしれませんね。


***


18世紀後半から19世紀にかけてのイギリス社会の
様々な側面がかいまみられる展覧会でした。

ロイヤル・アカデミーは現在も、
芸術家を主体とした自主的組織として
展覧会やスクールを運営しています。
https://www.royalacademy.org.uk/

いつの機会にかロンドンにある
ロイヤル・アカデミーにも足を運んでみたいものです。


***開催終了***
〈ロイヤル・アカデミー展〉
会期:2015年2月3日ー4月5日
会場:愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)
http://www-art.aac.pref.aichi.jp/exhibition/history/2014_05.html


今日はこれぐらいで。
それではまた。


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