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プロフィール

如月東子

Author:如月東子
C’est l’enfance de l’art.へようこそ。
(セ・ランファンス・ドゥ・ラール)

昔から絵を見るのが好きで、美術系の大学に行き「美術史」などを少し勉強しました。

その後、美術とは関係ないお仕事についたけど、美術について、普通の人よりはちょっぴりだけ多く考えてきました(多分)。

そんな私が、これまで美術鑑賞をするなかで気づいたこと・感じたこと・考えてきたことの中には、美術をもっと楽しみたいと思ってる人に、なにかヒントになることがあるかもしれません。

美術鑑賞の記録を中心に、美術館などの紹介や鑑賞の役に立つ情報などを載せていければ、と思います。

皆さんのお役に立てれば幸いです☆

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旧イタリア大使館別荘@日光(その2)

こんにちは如月東子です。

栃木県日光市の中禅寺湖畔、
旧イタリア大使館別荘訪問記のつづきです。

本邸前面

(前回の記事はこちら↓)
http://kisaraghitouko.blog.fc2.com/blog-entry-91.html


【建築家アントニン・レーモンドという人】

この建物を設計したのは、
アントニン・レーモンド(Antonin Raymond)という
建築家です。

レーモンドは、1888年、
当時はハプスブルク帝国のもとにあった
チェコスロバキアに生まれました。

プラハ工科大学で建築の教育を受けた後、
アメリカに渡り、カス・ギルバートの事務所に入ります。
フランク・ロイド・ライトのもとで働いた後、
ニューヨークで独立します。

その後、日本で帝国ホテル建設の任にあたっていた
フランク・ロイド・ライトの招きに応じて
1919年来日し、その後は戦争中の一時期をのぞき、
その活躍の場を日本に見出しました。

ジョサイア・コンドルと並び、
「日本近代建築の父」とも称されるそうですが、
一般には、コンドルやライトほど知られた名前ではないような気がします。


レーモンドが日本の建築に与えた影響もさることながら、
レーモンドは、本当に日本の建築を愛し、
そこから大きな影響を受けた建築家でもありました。

過去の踏襲と慣習のみが支配する20世紀初頭のヨーロッパから、
自由で新しい建築を求めてアメリカに渡ったレーモンドは、
そこにヨーロッパの亜流を発見して失望します。
そのレーモンドが理想の建築を見出したのが日本でした。


レーモンドは日本に来たときの驚きをこのように述べています。

私が日本にやってきたころ、つまり今から40年前の日本の民家には
驚くべき綜合が、そして完全さがあったものです。それは世界に類を
見ないものでした。家は大地から生えてきたキノコか樹木のように、
自然で真実な姿をみせていました。内的機能に全く忠実で、構造体は
全て堂々と外側に表現され、構造体自身が仕上げを兼ねているばかり
でなく、それが唯一の装飾でもあるのです。そこに使われている材料
はすべて真の職人、真の芸術家である職人の手によって選ばれ、細工
された自然のままの素材なのです。建物の内外を問わず、すべては簡
潔で直裁で、機能的で、しかも経済的です。
(『現代日本建築家全集1』(1971年 三一書房)p.154-155)



レーモンドの建築史は、
当初、ロイドら西洋近代の合理的建築の強い影響を受けながらも、
日本の伝統的な建築に学びながら、やがて、
みずからの考える「建築美」を実現していった軌跡でした。


第2次世界大戦中アメリカに戻ったレーモンドは、
建築界において、
バウハウス哲学に基づいた合理主義が席巻しているのを見出します。
そしてそれに反発します。

バウハウスの建築といえば、
「簡潔で」「機能的」なイメージがありますが、
それはレーモンドの理想とはかけ離れたものでした。

たしかに私もバウハウス建築の展示を見たことがありますが、
論理的・画一的な設計に違和感を感じたのは確かです。
(十把一絡げにしてはいけませんが、)
バウハウスの家は、かっこいいかもしれないけど、
ひとことで言って「住みづらそう」。

レーモンドの合理性は、そうではなくて、
「構造と機能に主眼をおき、外側から内側へではなく、
内側から外側へ向かってゆく設計態度」

(前掲書 p.154)

理論・観念ありきの建築をレーモンドは嫌ったのです。


構造のシンプルさ、素材そのままの美しさ、
機能がそのまま装飾であること。
使いやすい空間、自然環境の取り込み、
そして職人に対する信頼。
それらは、イタリア大使館別荘をみるとすべてわかります。


日本建築の中に「何か絶対的な理念」を見出したレーモンドは、
それをこのように表現しました。

「最も簡潔にして直截、機能的にして経済的、
かつ自然なるもののみが真に完き美を有する」

(前掲書 p.155)



・・・そのように美しかった日本の建築。
翻って現代の建築状況を考えると残念な気持ちにならざるを得ません。
かつての日本建築のうちに
建築のイデアすら見出したレーモンドの理念は、
現代の日本の建築を批判的に照射しているようにも思えます。


1976年まで生きたレーモンドは、
日本で数多くの建築を残していきました。

それは、個人の住宅をはじめとして、
教会や病院、各国大使館、
そして複合的な建築群としての大学の設計にまで及びます。

霊南坂に建てた自宅、
リーダーズ・ダイジェスト東京支部などの
画期的で名高い建築はすでに現存しませんが、
聖パウロカトリック教会http://www.karuizawa-stpaul.org/
聖オルバン教会http://www.nskk.org/tokyo/church/oruban/oruban.htm
東京ゴルフ倶楽部クラブハウスhttp://www.shiraishi-ken.co.jp/887
群馬音楽センターhttp://www.takasaki-bs.jp/center/ongaku_center.pdf
南山大学東京女子大学星薬科大学そのほかの大学など、
様々なところにレーモンドの名を見出せます。

彼の作品リストを眺める中に、
私自身の出身校の名を発見し、
あらためてその作品の幅広さと身近さを実感しました。



【国際避暑地 NIKKO】


旧イタリア大使館別荘には小さな副邸があり、
こちらも外観と内装の一部が再現されています。
その中は現在「国際避暑地歴史館」となっており、
「国際避暑地」であった日光を紹介する
パネル展示やビデオなどを見ることができます。

副邸


日光に行くと、
確かに海外からの観光客と思しき人たちの姿を
数多く見受けます。

バスに乗っても、
英語、韓国語、中国語の案内が流れますし、
日光は現在でも確かに「国際的」観光地といえると思います。


でも、日光がかつて「国際避暑地」として、
多くの駐日外国人達が交流の場としていたことを
知っている人は多くはないのではないでしょうか?

明治から昭和初期にかけて、
中禅寺湖畔は東京からの外国人達の避暑地として
栄えていたというのです。

イギリスの外交官をつとめたアーネスト・サトウ
実業家のトーマス・グラバー(長崎グラバー邸が有名)が別荘を建て、
釣りや登山などを楽しんだそうです。
特にグラバーは、湯ノ湖・湯の川に
カワマス(それまでは日本にいなかったよう)を放流し、
日本にイギリス式の釣りを伝えた人。
奥日光は「日本フライフィッシングの聖地」とも言われます。

その後、昭和初期にいたるまで、
中禅寺湖畔には各国の外交官が別荘を持ち、避暑に訪れたため、
「夏は外務省が日光に移る」とまで言われたそうです。

ヨットも盛んで、
毎年夏には中禅寺湖でヨット大会が開かれたほか、
大使もちょっとした移動には、ヨットを利用したといいます。


イタリア大使館のほかにも
当時の繁栄を中禅寺湖を囲むように点在する建物群があります。

復元された「中禅寺湖畔ボートハウス」、
現在は、公園として整備されている
グラバーの別荘「西六番園地」には、
当時の煙突が残り、かつての姿を偲ぶことができます。

また、現在進行中のプロジェクトとして、
旧イギリス大使館別荘(かつてのA.サトウの別荘)を
復原する工事が進んでいて、
来年にも公開されるようです。
イギリス大使館別荘は、イタリア大使館別荘のすぐ隣ですから、
今後はあわせて楽しめそうですね。


現在も歌が浜の手前には、
現役のフランス大使館別荘、ベルギー大使館別荘が
その瀟洒な姿をのぞかせていました。
(見学は不可)


***


帰り際には、中禅寺湖の由来にもなった
中禅寺に立ち寄りました。

中禅寺

奈良時代創建の古いお寺で、立木観音が有名。
なんと土に根付いたまま彫られ、
現在も根が土に埋まっているという千手観音です。


「中禅寺湖温泉」のバス停までに戻り、
さらにそのまま5〜10分ほど歩くと華厳の滝。
観瀑体験も久しぶりです。

華厳の滝


1泊2日の日光旅行。
よく歩きました・・・!

これから紅葉の季節。
日光旅行を考えている方も多いかもしれません。
その機会には、
ぜひ旧イタリア大使館別荘にまで足を伸ばしてみてくださいね。


【旧イタリア大使館別荘へのルート】

東武日光駅→(バス約40分)→中禅寺湖バス停
→(徒歩約1時間)→旧イタリア大使館別荘
→(徒歩約30〜40分)→中禅寺
→(徒歩約20分〜30分)→中禅寺湖バス停
→(徒歩約10分)→華厳の滝
→(バス約40分)→東武日光駅


旧イタリア大使館別荘
開園期間:4月1日~11月30日
開館時間(本邸及び歴史館の利用)
4~6月、9~11月:午前9時から午後4時
7~8月:午前9時から午後5時
TEL 0288-55-0880 (日光自然博物館)
http://www.nikko-kankou.org/spot/117/(日光旅ナビ)
http://www.nikko-nsm.co.jp/building/italia(日光自然博物館)





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